口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「それ、駄目です……。眠くなってしまいますから……」
「今日は疲れただろう。ゆっくり休め」
「明日も、私と一緒に……居てくれますか……?」
「どうだろうな。約束はできない」

 ──清広は、嘘をつかない。

 つぐみに約束をしたあと、それを破りたくないからこそ──硬い声音で苦しそうに呟くのだろう。

(わかっている。清広さんは、海上自衛官である限り。私ではなく、お仕事を優先しなければならないって)

 つぐみが彼にできることがあるとすれば、それは──。

「そう、ですよね……」

 浮気を疑わず、愛想を尽かすことなく。
 彼の無事を祈り、信じて待つことだけだ。

「だが……。忘れないでほしい。俺は仕事とつぐみ。どちらかしか選べないのであれば、前者は捨てると」

 清広がつぐみを愛し続ける限り、彼女は彼の妻として、夫を支えると誓う。

「はい……」

 彼に対する愛をうわ言のように告げたつぐみは、彼のぬくもりに包まれて夢の国へと旅立った。
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