口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「……っ」

 これにはつぐみも言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にしながら狼狽えた。

(な、ななな! なん、ど、どう言うこと……?)

 交際していた当時に、こうした過剰なスキンシップを受けたことなどなかったからだ。

(十年会わないうちに、何があったの……?)

 同年代の男性に比べると少しだけぶっきらぼうで、無口。
 機嫌がいい時ですらも、仏頂面なことが多かった。

(妹のようにしか、思われていなかったはずなのに……)

 彼女の手を引っ張っていくよりも、そっと隣で二つ年下のつぐみと歩幅を合わせて寄り添う姿が印象的な青年が──。

(清広さんが、知らない男の人に見える……)

 人が変わったかのように、もの凄い勢いで距離を詰めてくるのだ。

「つぐみは俺のものだ。誰にも渡さないし、傷つけさせない」

 それはつぐみへ得体のしれない恐怖を与えるのに、充分だった。

(十年前に、言ってくれたら……)

 かつて喉から手が出るほど欲しがっていた言葉は、今のつぐみにとっては自身を縛り付ける、鎖のようにしか思えない。

「愛している」

 素直に喜べない彼女は、さまざまな感情が浮かんでは消えていく清広の瞳から、視線を逸して無言を貫いた。
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