口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「あっ。金沢さん! こっち!」

 清広と恋人繋ぎをしたまま再び披露宴会場に戻ってきたつぐみは、新婦友人席に座る同僚に呼ばれた。

「清広さ……」

 彼女の呼びかけに応えるため、歩みを止めたつぐみは、清広と繋いだ手を離してもらおうとしたのだが──。

「つぐみは、こっちだ」

 ここで別れたら、二度と会えない可能性が高いと危惧したのだろう。
 首を振った彼は、当然のように新婦友人席とは真逆の方向に歩き出した。

(どこへ、連れて行くつもりなの……?)

 困惑したつぐみが不安そうな顔で彼と手を繋ぎ、辿り着いた先は──。

(ここって……)

 ──新郎友人席だった。
 六人掛けの丸テーブルには清広と同じ制服を身に纏う、四人の男性が腰かけている。

「座ってくれ」
「あ、あの……」
「いいから」

 彼は空いている椅子に座るようつぐみへ促すと、彼女の隣に腰を下ろす。

(本当に、いいのかな……?)

 つぐみは不安でいっぱいになりながら、渋々清広の隣で披露宴へ参加する。

(私に愛を囁いた清広さんの気持ちは、本物なの……?)

 どれほど好意のある素振りを見せられたとしても、一度裏切られた経験のある彼女は、簡単には彼を信じられない。
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