口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「清広さん……!」

 ガサガサと紙をかき分けるようなペーパーノイズを耳にしたつぐみは、勢いよく上半身を起こす。

 彼女の視界に飛び込んできたのは、テーブルの上で五枚ほどの色紙を重ね合わせ──横に蛇腹折りをした状態で、真ん中を二つ折りにし輪ゴムで止めたあと。
 一枚一枚薄い紙を広げてペーパーフラワーを作る、清広の姿だった。

「どうして……」
「見本があったからな。この程度であれば、俺でも作れる」
「私の仕事……」
「壁に飾るための花であれば、誰が作ろうと関係ないだろう」
「清広さんだって、お仕事で疲れているのに……!」
「──つぐみの夫として、俺は君に何もしてやれていない。これくらいはさせてくれ」
「清広さん……」

 つぐみは清広の優しさに触れ、今にも泣き出しそうに目元を緩めながらハサミを手に取る。

(泣いている場合じゃない)

 清広が手伝ってくれたおかげで、希望の光が見えてきた。
 つぐみは清広と肩を寄せ合い、真剣な眼差しでメダルを作り始める。

「ありがとう、ございます」
「気にするな」
「せっかくの、お休みなのに……」
「順序が逆だ。俺が休日だったからこそ、つぐみの力になれた。これほど嬉しいことはない」

 清広は妻を安心させるように口元を緩めると、ペーパーフラワー作りに勤しむ。
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