口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
『新郎新婦の、ご入場です!』

 ──疑心暗鬼のまま、披露宴が始まる。

 清広のおかげで、つぐみと仲の悪い鈴木と席が離れたからだろうか。
 参列者同士でトラブルが起きることはなく、披露宴は終わった。

(目黒先生の花嫁姿、綺麗だったな……)

 かつて愛した人と、再会したからだろうか?

 新郎新婦の姿を目にしたつぐみは、清広の隣でウエディングドレスを身に纏う自分の姿を想像した。

(もう一度、本当に……。やり直せるの……?)

 ──今も、昔も。

 つぐみが誰かの花嫁になりたいと願った時、思い浮かべる相手は清広だけだ。

(素直な気持ちを、伝えればいいだけだって。わかっている……)

 別れを切り出された当初はこの上ない喪失感に襲われたが、それも彼と離れていた長い時間によって随分と薄れた。

 清広とともに再び長い時間を過ごせば、心の底から彼を好きだと言えるかもしれない。

(たとえ、そうだとしても……)

 ──つぐみは許せなかった。

 当時の謝罪すらまともにしていない状態で、何事もなかったかのように愛を囁く清広のことが。
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