口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「つぐみ……」

 苦しそうに、愛おしそうに。

 伝えたい言葉が多すぎて、声にならない想いを抱く彼の姿を間近で見ているだけでも、つぐみは妻になれてよかったと幸福な気持ちでいっぱいになる。

「私は優しい清広さんが、大好きです……」

 つぐみは言葉で感謝を伝えるだけではなく、妻としての役目も果たさなければならないのに──。

 彼が醸し出す独特な匂いを嗅ぐと安心してしまい、どうしても眠気に抗えない。

「ああ。知っている。仕事を全力で頑張るつぐみを、俺も愛している……」

 つぐみは彼の背中に両手を回してしがみつくと、意識を手放した。
< 123 / 160 >

この作品をシェア

pagetop