口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「送別会?」

 つぐみは清広の不機嫌な声で、目が覚めた。
 どうやら彼は妻の隣で電話をしているらしく、気の抜けた相槌が聞こえて来る。

「はぁ。つぐみ」
「ん……。清広、さん……?」
「これから、男女に別れて目黒海将の送別会が行われるらしい」
「目黒先生の……?」
「参加するか」

 寝ぼけ眼を擦りながら話を聞いていたつぐみは、こくんと頷く。
 それは彼女からしてみれば、了承したわけではなく……。
 あまりにも眠すぎて、意識を保っていられなかっただけなのだが……。

「わかりました。伺います」

 清広が通話を終えた瞬間。
 我に返ったつぐみは、青ざめた表情で夫を見つめた。

「い、今……。私……」
「すまない、つぐみ。今回だけは、我慢してもらえないか」

 愛する清広の頼みでなければ、つぐみは絶対に送別会なんかいかなかっただろう。
 空気を悪くさせるだけだと、よくわかっていたからだ。

(目黒先生には、お世話になっているし……。旦那様は、清広さんよりも上の立場の方だから……)

 彼女は渋々参加を了承すると、清広に飛びついた。
< 124 / 160 >

この作品をシェア

pagetop