口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「それではこれより、目黒先生の送別会を始めまーす!」

 女性陣を中心とした送別会は、つぐみの勤務する保育園で行われた。
 後輩の音頭によって職場に丸い円を描くように集まった保育士達は、缶ビールやソフトドリンクを片手に乾杯の挨拶をする。

「ちょっといいかしら?」
「は、はい。もちろん……」

 本日の主役が同僚達と笑顔で会話する姿を無言でぼんやりと見守っていたつぐみが、ミネラルウォーターのペットボトルを一本飲み干しそうになった頃。

 雑談の輪から抜け出した目黒に、声をかけられた。

「安堂先生も、そろそろ安堂海曹長に愛想が尽きた頃なんじゃない?」

 その問いかけを耳にしたつぐみは、ぶんぶんと勢いよく左右に首を振る。

「いえ、そんな……」

 彼女は彼と過ごすうちに、その言葉とは真逆の感情を抱いていたからだ。

 目黒は口ごもるつぐみに笑顔を浮かべて、無言で圧をかける。
 その視線に怯えた彼女は引き攣った笑みを浮かべながら、か細い声で告げた。
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