口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(清広さんが、あの時。私の許嫁だと称さなければ……)

 同僚は披露宴の開始時間を過ぎても怒りを爆発させ続け、最終的には追い返されていたかもしれない。
 彼のおかげで最悪の事態には至らずに済んでいるとしても、つぐみは素直に再会を喜べないでいた。

「安堂。二次会は?」
「出ない」
「だよなー。んじゃ、目黒海将にはそう言っとくわ」
「ああ。どんな罰も、甘んじて受けると伝えてくれ」
「了解」

 つぐみがこのあと、彼とどんな話をするべきかを考えている間に、清広は出席予定だった二次会の欠席を表明した。

 この内容を彼の隣で耳にした彼女は意識を現実に引き戻し、繋いだ手を離そうと必死になる。

「あの、ドタキャンは……。よくないと思います……」

 だが、どれほど清広の指先から自身の手を引き離そうとしても、それはかなわなかった。
 何度も彼が、逃げるつぐみの指先を絡めて捕まえたからだ。

「二次会よりも、つぐみと話し合う方が大事だ」
「ですが……」
「ここで、繋いだこの手を離したら。もう二度と、俺とは会ってくれないだろう」

 ──清広にはつぐみの考えていることが、手に取るようにわかるようだ。
< 14 / 160 >

この作品をシェア

pagetop