口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「覚悟はしておけ」
「……はい」

 部内選抜の結果発表を待っている清広にとって、目黒のアドバイスはつぐみとの甘いひと時を暢気に享受している場合ではないと釘を刺されたような形であった。

「妻が保育士だと、引く手あまただからな。転居もスムーズだぞ。あとは互いに険悪な雰囲気にならぬよう気をつけること、喧嘩になったらすぐに非を認めるのが夫婦円満の秘訣だ!」

 清広が暗い顔で、目黒の飲むビールが発泡する様子を眺めていたからだろう。
 彼を元気づけようと明るい声が聞こえてくる。

(つぐみは俺に、着いて来てくれるだろうか……)

 満面の笑みを浮かべた愛おしき妻の表情が曇る姿を想像した清広は、目の前に置かれた烏龍茶のグラスを握りしめる。

(目黒海将の話は、冗談では済まされない。ほぼ確定している、俺のキャリアだと認識するべきだ)

 清広は先延ばしにしていたつぐみと自分の未来を考える時がついに来たのだと悟り、ある悩みを目黒に打ち明けようとしたが──。

「目黒海将。俺は……」

 それを拒むように、清広の携帯が着信を知らせる。

「すみません」
「ああ、遠慮せずに出てくれ!」

 彼は目黒に一言断り、通話に出る。
< 131 / 160 >

この作品をシェア

pagetop