口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(その通りです、なんて……。言えない、よね……)

 二の句を紡げなくなったつぐみが気まずそうに視線を落とせば、その隙を狙った彼が椅子から立ち上がるように告げ、彼女を引っ張った。

「行くぞ」
「ま、待ってください……!」

 つぐみは清広の暴走を止めるため、必死に声を張り上げたが──彼女の抵抗など、彼にとってはなんの意味もない。

「これ以上意味もなく騒ぐようなら、抱きかかえて連れて行くが」
「抱く……?」
「こう言うことだ」

 清広は一度歩みを止めると、一瞬彼女と繋いだ指を離す。

(これが、最後のチャンスかもしれない……!)

 当然つぐみは逃げようとするが、すぐに力強い動きで手首を掴まれ、引き寄せられてしまう。
 そのまま彼女を抱き上げた清広は、恥ずかしげもなく堂々と歩き始めた。

「き、清広さん……!」

 つぐみが頬を赤く染めながら彼の名を呼べば、何事かと会場に残っていた人々の視線が突き刺さる。

「あの時よりも、痩せたな。ちゃんと、食べているのか」
「清広さんには、関係ありませんから……!」
「許嫁の体調管理も、仕事のうちだ」

 清広が堂々と言い放った意味不明な言葉に絶句しながら、つぐみはぽかんと口を開けて彼を見上げた。
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