口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「それはない。むさ苦しく、まともな休みも取れずに働かされる。あそこは最悪だ」

 日頃の鬱憤が溜まっていたようで、清広は珍しく悪口に近い愚痴を溢しながら言いたい放題言っている。

(清広さんと、本当の夫婦になれた証拠なのかもしれない……)

 夫婦を阻む見えない透明の壁が消えてなくなり、本心を曝け出せるようになった清広とつぐみは、どれほど離れた場所にいても強い絆で結ばれ続ける。

「清広さんとあと十日も一緒に居られるなんて、夢のようです」
「十日なんて、あっと言う間だぞ。離れていた分、たくさん愛し合おう」
「……はい……っ!」

 恥ずかしそうに頬を赤く染めたつぐみは、清広と唇を触れ合わせると帰路についた。
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