口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
9・あなたと共に、どこまでも
──それから、約一年後。
清広は正月休みを挟んで二月上旬に幹部学校を卒業すると、約一か月間の近海練習航海を経験。
七月に海曹長から三尉へ昇格し、晴れて幹部になった。
彼は十日ほどの纏まった休みを、取得することになったのだが……。
「お帰りなさい」
「転勤先が決まった」
思いがけないお土産とともにつぐみの元へ帰ってきた清広は、挨拶もそこそこに愛する妻へ低い声で本題を伝えた。
「幹部になったからな。予定通りの状況だ。この地に残りたいのであれば──」
「清広さん」
笑顔のつぐみの口から怒気を含んだ声音が聞こえて来たことに驚いた清広が動きを止めれば、彼女ははっきりと彼に宣言した。
「単身赴任をするとか、離婚してほしいと提案したら、怒りますよ」
つぐみは隠しきれない怒りの感情を露わにすると、清広の解答を待つ。
「つぐみさえよければ……着いて来てくれないか」
「違いますよね」
彼は彼女が拒否できるように選択肢を与えたつもりだったのだが、静かな怒りに支配されている妻は、お気に召さなかったようだ。
清広は正月休みを挟んで二月上旬に幹部学校を卒業すると、約一か月間の近海練習航海を経験。
七月に海曹長から三尉へ昇格し、晴れて幹部になった。
彼は十日ほどの纏まった休みを、取得することになったのだが……。
「お帰りなさい」
「転勤先が決まった」
思いがけないお土産とともにつぐみの元へ帰ってきた清広は、挨拶もそこそこに愛する妻へ低い声で本題を伝えた。
「幹部になったからな。予定通りの状況だ。この地に残りたいのであれば──」
「清広さん」
笑顔のつぐみの口から怒気を含んだ声音が聞こえて来たことに驚いた清広が動きを止めれば、彼女ははっきりと彼に宣言した。
「単身赴任をするとか、離婚してほしいと提案したら、怒りますよ」
つぐみは隠しきれない怒りの感情を露わにすると、清広の解答を待つ。
「つぐみさえよければ……着いて来てくれないか」
「違いますよね」
彼は彼女が拒否できるように選択肢を与えたつもりだったのだが、静かな怒りに支配されている妻は、お気に召さなかったようだ。