口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「……敵わないな」
お手上げだと言うように負けを認めた清広は、熱心に潜水艦を見つめていた理由を告げた。
「正しくは、ホームシックだ。潜水艦は、俺にとって帰るべき場所だからな」
「……そうですよね……」
「だがそれは、海の中での話だ。陸の上では、俺の帰る場所はつぐみのいる場所に違いない」
「清広さん……」
夫の帰る場所に認定されたつぐみは、ポカポカと心が暖かな気持ちに包まれるのを感じる。
(私は幸せ者だ……)
この幸福感は、清広の妻にならなければ一生得ることなどできなかっただろう。
大事なものも、欲しいものすらない彼女が唯一、手放したくないと思った。
大切で、愛おしい、大好きな人。
「俺は何があっても、つぐみの待つ陸に戻る。だから、愛想を尽かさないでほしい……」
「──海の中の生活が居心地良すぎて、戻ってこない、なんてことだけはならないように、願っています」
つぐみは海に向かって、祈りを捧げる。
(清広さんと、ずっと一緒にいられますように)
彼女の願いを耳にした清広は、不機嫌そうに眉を顰めて吐き捨てた。
お手上げだと言うように負けを認めた清広は、熱心に潜水艦を見つめていた理由を告げた。
「正しくは、ホームシックだ。潜水艦は、俺にとって帰るべき場所だからな」
「……そうですよね……」
「だがそれは、海の中での話だ。陸の上では、俺の帰る場所はつぐみのいる場所に違いない」
「清広さん……」
夫の帰る場所に認定されたつぐみは、ポカポカと心が暖かな気持ちに包まれるのを感じる。
(私は幸せ者だ……)
この幸福感は、清広の妻にならなければ一生得ることなどできなかっただろう。
大事なものも、欲しいものすらない彼女が唯一、手放したくないと思った。
大切で、愛おしい、大好きな人。
「俺は何があっても、つぐみの待つ陸に戻る。だから、愛想を尽かさないでほしい……」
「──海の中の生活が居心地良すぎて、戻ってこない、なんてことだけはならないように、願っています」
つぐみは海に向かって、祈りを捧げる。
(清広さんと、ずっと一緒にいられますように)
彼女の願いを耳にした清広は、不機嫌そうに眉を顰めて吐き捨てた。