口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
1・26歳。上司の披露宴で、最悪の再会
 ──あれから、十年後。

 清広との一件で心に深い傷を追ったつぐみは、出身地の北海道から遠く離れた地を転々としながら──保育士の仕事に明け暮れていた。

『金沢さんも、来るでしょ?』

 そんなある日のことだ。
 つぐみは上司の披露宴に呼ばれた。

(行きたくないな……)

 賑やかな場所に何かと気後れしがちで、大人しい性格をしている彼女は真っ先にそう思った。
 だが、女性だけの職場で一人だけ欠席すると、角が立つのは火を見るよりも明らかだ。

『参列者は全員、白のドレスを着ること! 金沢さんも、用意してね!』

 彼女は渋々、披露宴への参加を決めた。
 その際に同僚の鈴木(すずき)から言われたのが、上記の言葉だ。

(白のドレスって、マナー違反じゃ……?)

 白は花嫁が纏う色だ。

 主催者側から直々にドレスコードの指定を受けた時以外は、身につけるべきではないことくらい、つぐみも知っている。

『ドレスコードは、黒だからね! 全員、気をつけてよ!』

 なんとも言えない表情で思い悩んでいた彼女の元に、新婦の目黒(めぐろ)から送信されたグループチャットのメッセージが目に入る。

 その内容を目にした彼女は、余計に混乱した。
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