口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「今日一日、デートをしよう」

 覚悟を決めたつぐみが苛立った様子で告げた言葉を遮った彼は、彼女が想像もしていなかった言葉を口にした。

(男女交際の方じゃなくて、デートに付き合ってほしいってこと……?)

 清広からデートの誘いを受けたつぐみは、明らかに気乗りしない様子を見せている。
 胸元の前で腕を組んだ彼女は、納得がいかない様子で声を震わせた。

「そんなの、時間の無駄です」
「やってみなければ、わからないこともある」
「随分と自信があるようですね」
「ああ。心の底からつぐみが、俺を嫌っているわけではないと知っているからな」

 清広から指摘を受けたつぐみは、悔しそうに唇を噛み締めた。
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