口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(図星だ……)

 本気で大嫌いな人に、これほど長い間抱き寄せられていたのであれば──つぐみは全身を震わせ泣きじゃくり、必死にその腕から逃れようと大暴れしていただろう。

(途中で諦めにも近い気持ちを抱いたのも。こうして彼の腕の中でじっとしているのも。それがかつて、愛した人だから……)

 つぐみは清広から指摘を受けたことにより、気づいてしまった。
 本当は、もっと自分を求めてほしい。
 つぐみなしでは生きていけないと、語るのならば──。

(否定しきれないほどに……私を愛して)

 口先だけではなく、態度で表してほしいと。

「怖いか? 俺に再び惚れるのが」
「そんなこと……!」
「なら、決まりだな」

 つぐみの説得に成功した彼は屈託のない笑顔を浮かべると、つぐみを抱きかえてベッドを降りた。
< 33 / 160 >

この作品をシェア

pagetop