口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
 清広と縁を切ってからは、シンプルで動きやすい服を着るようになった。

(おしゃれなんかしたって、なんの意味もなかったから……)

 つぐみは用意された服を目にして、暗い表情で考え込む。

(──清広さんが好きなのは、昔の私であって、今の私じゃ、ない)

 それが許せないと言うのなら、昔よりも今を好きになってもらう努力をすればいいだけだ。

(私は清広さんに、文句を言う資格なんてないのに……)

 踏み出す勇気のないつぐみは、ハンガーラックにかけられた洋服の中から、好みの服を一着選んで身に纏う気力がなかった。

(このままじゃ、店員さんも困ってしまう……)

 洋服を購入せずにこのまま退店したい気持ちでいっぱいだった彼女は、店員へ控えめに声をかけた。

「あの……。こう言うの、よくわからなくて……。この中からだったら、なんでもいいです……」
「承知いたしました。それでは、こちらをご試着頂けますでしょうか」

 店員がつぐみに差し出したのは、セーラー襟が印象的なAラインのワンピースだ。

 胸元に結ばれた水色のリボンと白を基調としたその洋服は、実年齢よりも子どもっぽい印象を与えるのではないかと心配だったが──。
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