口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(どうして今まで、忘れていたのだろう?)
過去を思い出したつぐみは清広のせいだと責任転嫁していた自分が恥ずかしくなり、消えたくなった。
(私がお揃いの服を着続けたいなんて、願ったから……)
清広が海上自衛官になったのは、彼の意思ではない。
海上自衛隊がどんな組織なのか知らない、幼いつぐみが頼み込んだせいだ。
彼は必死に約束を守ろうとしていたのに、彼女はそれを忘れ……。
一時の別れを永遠のものだと勘違いして、清広との交流を断ってしまった。
「正式に海上自衛官として働くようになってから、何度もつぐみに会おうと思った。だが、俺達は原則勤務地を離れられない決まりがあってな……」
「そう、なのですか」
「ああ。だから、会いに行けなかった」
昨日までのつぐみであれば、そんな言い訳は聞きたくないと耳を塞ぎ、清広を拒絶していたが──真実を知った彼女には、彼の主張を頭ごなしに否定する権利などない。
つぐみは清広の声に、黙って耳を傾けた。