口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
わざわざ説明されるまでもないと、つぐみは不機嫌そうに彼へ告げた。
「交際初日に全財産を預ける彼氏など、聞いたことがありません」
「結婚を前提としているからな。つぐみでなければ渡さない」
「ですが、いくらなんでも……」
「そう警戒するな。言葉通りに受け取ってくれ」
清広はつぐみに通帳やキャッシュカードの在処を指差しで伝えると、耳元で暗証番号を囁いた。
どうやら彼は本気で、彼女に金銭管理を任せるつもりのようだ。
(あり得ない……)
いくらつぐみが元許嫁で、双方の両親とも面識があったとしても。
復縁初日で好きなだけ使ってくれと言わんばかりの態度は到底受け入れられなかった。
(清広さんのお金は、手をつけないで放置しておこう……)
生活費は自分の財布から出そうと固く誓ったつぐみは、他にメリットはないのかと彼に回答を促すような視線を送った。
「こうして触れ合える距離にいる時は、たくさんの愛を注ぎ込もう」
「それだけ、ですか」
「ああ。何か問題でも?」
「い、え……」
清広に堂々と他にはないと宣言されてしまえば、これ以上言葉を交わす気にもなれない。
彼とともに暮らす上で必要な話し合いを終えたつぐみは、彼の腕の中でゆっくりと目を瞑った。
(目覚めた時も……。清広さんが、そばにいますように……)
そんな、ささやかな願い事を胸に抱きながら──。
「交際初日に全財産を預ける彼氏など、聞いたことがありません」
「結婚を前提としているからな。つぐみでなければ渡さない」
「ですが、いくらなんでも……」
「そう警戒するな。言葉通りに受け取ってくれ」
清広はつぐみに通帳やキャッシュカードの在処を指差しで伝えると、耳元で暗証番号を囁いた。
どうやら彼は本気で、彼女に金銭管理を任せるつもりのようだ。
(あり得ない……)
いくらつぐみが元許嫁で、双方の両親とも面識があったとしても。
復縁初日で好きなだけ使ってくれと言わんばかりの態度は到底受け入れられなかった。
(清広さんのお金は、手をつけないで放置しておこう……)
生活費は自分の財布から出そうと固く誓ったつぐみは、他にメリットはないのかと彼に回答を促すような視線を送った。
「こうして触れ合える距離にいる時は、たくさんの愛を注ぎ込もう」
「それだけ、ですか」
「ああ。何か問題でも?」
「い、え……」
清広に堂々と他にはないと宣言されてしまえば、これ以上言葉を交わす気にもなれない。
彼とともに暮らす上で必要な話し合いを終えたつぐみは、彼の腕の中でゆっくりと目を瞑った。
(目覚めた時も……。清広さんが、そばにいますように……)
そんな、ささやかな願い事を胸に抱きながら──。