口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
 トーストは焼きたて。

 咀嚼するたびにサクサクと音が鳴り、スクランブルエッグはふわふわとした食感を楽しめる。
 サラダはシャキシャキしており、瑞々しい。

 つぐみは清広のおかげで朝から豪華な食事を堪能できたことに感動しているようだ。
 か細い声で、清広にお礼を告げた。

「あの……。すごく、おいしいです。ありがとう、ございます……」

「喜んでもらえたようで、よかった。俺が家にいる時は、家事は任せてくれ」

 笑顔を浮かべた清広に見守られながら食事を終えたつぐみは、大好きな人とともに過ごせる時間が過ぎ去っていくことを不満に思う。

(どうして今日は、出勤日なんだろう……)

 清広と愛を育む時間がないことを残念に思いながら、つぐみは荷物を持って玄関先に立つ。

「つぐみ」
「……はい」
「交際を順調に続けるためには、スキンシップが必要らしい」

 別れの挨拶をしようとしたつぐみは、清広に呼び止められ面食らう。
 寝坊をしたせいで、彼女に残されていた時間はそれほど長くなかったからだ。
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