口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
 目黒は彼女に質問をした理由を補足する。

「実はね。披露宴のあと、大規模な二次会が行われたの。うちの旦那が長期休みの間に、部下の既婚率を上げたいって躍起になって……」

 その話を耳にしたつぐみは、目黒の口からすべての事情が語られる前に合点がいった。

(私と再会しなければ、清広さんは……。二次会に参加する予定だったから……)

 清広はつぐみと関係を深めるため、二次会をドタキャンして彼女を自宅に連れ込んでいる。
 このまま彼との間に何もなかったと上司に説明すれば、清広は相応しい女性を目黒夫妻から紹介されるのだろう。

(清広さんが、私以外の女の人と……)

 つぐみは清広の隣に自分以外の女性が並び立つ姿を想像し、胸が痛むのを感じた。

(もう二度と、離れたくない……)

 繋いだ手をつぐみから手放すことなど、あってはならない。
 右手に持っていたボールペンを握り締めた彼女は、震える声で目黒に告げた。

「元、許嫁です。いろいろあって、お別れしたのですが……。先日、復縁、しました……。私は、清広さんの……彼女、です……」

 つぐみは事実だけを、自信がなさそうな様子で上司に告げた。
< 59 / 160 >

この作品をシェア

pagetop