口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「違う……。あの人、だぁれ……?」

 園内に侵入してきた人物が大柄の男性だと知った園児は怖がり、つぐみの胸元をきつく握りしめる。

 小さな瞳に涙を浮かべて、今にも泣き出してしまいそうに怯えてしまった。

(まさか、不審者……?)

 姿を見せた男性の顔を確認していなかったつぐみは、外から自身の名を呼ぶ声を耳にするまで、それが誰なのか気づけなかった。

「つぐみ」
「き、清広さん……?」
「よかった……。無事で……」

 つぐみは園児を抱きかかえたまますぐさま清広に駆け寄り、言葉を交わした。
 どうやら連絡が長時間取れなかったため、わざわざ様子を見に来たようだ。

「すみません……。急に、延長保育を担当することになって……」
「こんな遅くまで、働いているのか」
「はい……。この子のお迎えがこないと、退勤できなくて……」
「かにゃじゃわせんせ、だれー?」

 つぐみの腕の中で不思議そうに清広の顔を確認した園児は、不思議そうに彼へ問いかける。

(知らない男の人を見て、不審者だって叫ばれたら、どうしようかと思った……)

 園児の前で最悪な事態が起きるのだけは、回避できた。
 それにホッとしながら、彼女は二人の会話を見守った。
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