口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「俺はつぐみの、交際相手だ」
「こーしゃい?」
「子どもにはまだ、難しいな……」

 清広がつぐみとの関係をどう説明するべきかと悩んでいる姿を目にした彼女は、難しい顔で思い悩む。

(あんまりこう言うことは、言いたくないけど……)

 保育園に部外者がいるのは、あまりいい状況ではない。

 二人の関係性をはっきりさせておかなければと覚悟を決めたつぐみは、助け舟を出した。

「あのね。金沢先生と清広さんは、パパとママみたいな感じ、なの……」
「かなじゃわせんせ、らぶらぶ?」
「ああ」

 つぐみが園児の問いかけに答えるよりも早く、清広が彼女の腰を抱く。

 それに嬉しそうな声を上げた子どもがキャッキャと騒げば、パタパタと清広の後方からこちらに向かってやってくる軽快な足音が聞こえてきた。

「金沢先生! ごめんなさい! どうしても迎えに来れなくて……!」
「ままー!」

 延長保育終了から約三十分後、園児の保護者が迎えに来たのだ。

 園児はつぐみの腕の中で嬉しそうな声を上げるとブンブンと手を振り、母親との再会を喜ぶ。

 愛娘に優しく微笑んだ女性はつぐみの腰を抱き寄せていた清広の姿を見捉えると、不思議そうに彼の名字を呼んだ。
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