口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「安堂海曹長?」
「ご無沙汰しております」
「どうして、ここに……」
「まま! かにゃじゃわせんせーと、らぶらぶ!」

 訝しげな視線を向けていた母親は、娘の言葉を受けて清広とつぐみを交互に見つめ──どうやら二人の関係を悟ったらしい。

「二人の時間を邪魔してしまい、申し訳ありませんでした……!」
「い、いえ……」
「いつもすみません! 明日も、よろしくお願いします!」
「かにゃじゃわせんせ、ばいばーい!」

 呆れを含んだ気まずそうな愛想笑いを浮かべた女性は、つぐみの手から子どもを預かると、頭を下げて去って行った。

「よかったな」

 その後ろ姿を呆然と眺めていたつぐみは、耳元で囁かれた清広の声で我に返る。

「す、すみません! 今すぐ、施錠します……!」
「ああ。ゆっくりでいいぞ。待っている」

 園児の迎えが来たなら、長々と保育園に居続ける理由がない。

 つぐみは慌てふためきながら戸締まりを確認し、清広と二人で保育園の外に出た。
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