口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「あの……。本当はもっと、早く……。帰宅する予定だったんです……。それで……」
「仕事を押し付けられたのか」
「……はい……」
「披露宴で、揉めていた相手なら……」
「い、いえ。違います。目黒先生に、急な用事が入ってしまって……」

 清広の瞳が不機嫌そうに歪められた姿を目にした彼女は、慌てて事実を告げた。
 納得がいかない様子でこちらをじっと見つめた彼の口から、か細い声が聞こえてくる。

「俺はつぐみが心配だ」
「清広さん……?」
「理不尽な目に合っているのであれば、放っておけない」

 清広の瞳には、有無を言わせぬ強い意志が宿っていた。
 彼が心の奥底で静かに怒りを抱いている時にする表情だと気づいたつぐみは、慌てて事を荒立てる必要はないのだと語る。

「だ、大丈夫です。鈴木先生は、退職されましたから……」
「そうか。だが……」
「目黒先生に延長保育を頼まれたのは、たまたまです!」
「本当に?」

 清広の問いかけに何度もこくこくと頷けば、彼女を力強く抱き寄せた。
< 67 / 160 >

この作品をシェア

pagetop