口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
アジの煮つけ、肉じゃが、炊き込みご飯──清広とともに帰宅したつぐみは、食卓に並べられた料理の数々を目にして、瞳を輝かせる。

「早く食べて、寝よう」

 明日も仕事のつぐみに、無駄な時間を過ごしている暇はない。
 清広の言葉を受けた彼女は席に座り、食事を始めた。

(至れり尽くせりだ……)

 朝だけではなく、夕食まで清広に用意させた挙げ句、迎えにまで来てもらってしまった。

 彼を家政婦やボディーガード扱いしていることに罪悪感を感じていたつぐみは、清広の作った料理が見た目だけではなく味までおいしいと知り、張り合うのをやめた。

 逆立ちしたって、彼には勝てないと気付かされたからだ。

(清広さんは、私にはもったいない人だ……)

 なんでもそつなく彼のことが好き。
 誰にも渡したくない。

 そう心の奥底で叫ぶ気持ちから目を背けていたつぐみは、素直になってもいいんじゃないかと何度も自分の背中を押すが──。

 どうしても、うまく言葉が出てこない。

(嫌われたらどうしよう。私の好意を迷惑がられたら?)

 あり得ないとわかっているのに、不安ばかりが脳裏に過る。
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