口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(清広さん、大丈夫かな……?)

 不安でいっぱいになりながら身を清めたつぐみは、失礼を承知で清広の部屋に顔を出そうか迷いながら、廊下を行ったり来たりを繰り返していた。

(邪魔したら、悪いし……)

 つぐみは悩んだ末に、清広から好きに使っていいと言われた自室へと戻った。

「なんで……」

 ──昨夜彼から「引っ越し屋が明日荷物を持って来る」と聞かされていたが、まさか住んでいた状態のまま荷物が運び込まれるなど思いもしない。

(清広さんが、荷ほどきをしてくれたのかな……?)

 つぐみは住み慣れた自身の部屋が再現されていることに驚きながら、ベッドに勢いよく倒れ込む。

(今日はもう、遅いし……。明日、お礼を言えばいいよね……?)

 心の中で言い訳をした彼女は、彼が忽然と姿を消したことに気づかぬまま、眠りについた。
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