連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
ルーミンは小さな小皿に、錠剤やカプセルを6種類くらい入れた。

「それって・・・何の薬なのですか?」

「ご主人様のサプリメントです。食が細いお方なので、栄養剤が必要なのです」

ルーミンはトレイにお茶のセットとサプリの小皿を並べると、ズボンのポケットから古びた懐中時計を取り出した。

「あと、1時間くらいすれば、トビアス様は階下に降りていらっしゃると思います。
私は本館で模写を続けるので、その時にまた、来ます」

そう言うと、するりと台所の勝手口から出ていってしまった。

ガチャン

自転車のスタンドを跳ねる音がするので、ここでは、自転車移動が一番効率がいいのだろう。

それにしても不愛想で、とりつく島のない男だ。

過去にも、僕のような男娼を囲っていたのか、彼から聞き出すのは無理だろうと判断した。

僕はスープを飲み干すと、玄関ホールに戻った。
歩くたびに、足環が皮膚にこすれる。


黒い鞄はそのまま置いてある。

すこし安堵して、そのまま階段に視線をやると、東洋の水墨画が壁にいくつか飾られているのに気が付いた。

そうか、東洋美術評論家だ。


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