連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス

水墨画の世界

僕は階段を一段昇り、壁に飾ってある山水画を観察した。

霞がたなびく山並みと、ゆったりと弧を描く川、その川沿いの小さな木の家で書物を読む人が描かれている。

上の空白部分には、筆でぐにゃぐにゃの文字が描かれているが、読めない。

自然を愛で、静かに暮らす人の生活が素晴らしいという意味だろうと思った。

「それは中国の画人が描いた。桃源郷、つまりシャンバラだ」

「シャンバラって?」

マンダレイ氏がゆったりした紫のペイズリー柄のガウンを羽織り、手すりに持たれながら降りて来た。

「シャンバラというのは、西洋風に言えば神の国という・・・場所だよ。
この地球のどこかに、チベットにあるとも言われるがね。
選ばれし者しか入れないと言われる」

白と黒で構成されたその絵には、静寂と濃淡の中に色彩があるように感じる。

「春の絵だね。桃の花があちこちで咲いているし、微かに風も吹いている」

マンダレイ氏は、階段で僕と並んで立ち、絵の柳の木が揺れているのを指さした。

彼の身長は、僕より大きいはずだが、なで肩で猫背なので、小柄に見える。

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