連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
猫たちが踊ったり、楽器を奏でている絵や、髪を振り乱した足のない、女の幽霊の絵を見せてくれた。

僕の目に留まったのは、雪のつもる川沿いの町並みが描かれている水墨画だ。

木々が黒いシルエットになり、薄墨の空に宵の明星とおぼろの月、遠い山並みがわずかに紫がかっているように見える。

「これは・・・きれいですね。張り詰めた空気、冷たい感じがいいです」

「私もいいと思うよ。静けさと孤独・・・そしてわずかに川面をすべる風の音。

ゆっくりとした運筆と丁寧な描写が、孤独だけではなく、崇高さ、精神性を感じさせてくれる」

彼の指先が家の窓、そこだけが白くぼんやりとした明るさを示した。

「そして、家の明かりが・・・小さな希望のように灯っている」

そう言うと、その色紙を僕に差し出した。

「気に入ったのなら持っていなさい。
模写だから価値はないけど。ちょっと飾るのならいい」

僕はその色紙を、両手で受け取った。

「ありがとうございます」

小さな希望の光・・・いい言葉だと素直に思えた。


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