連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
はだけた薄い胸、鎖骨に影が落ちる。

白い肌はなめらかで、胸の真ん中に、赤い引き連れた傷跡が見えた。
手術の痕跡。

僕が覗き込むと、トビアス様が薄目を開けた。

「トビアス様、ご飯ができましたよ。
それに寝るのならベッドにしてください。風邪をひきますよ」

「うんうん」

そう言いながら、腕で目をこすった。
そのしぐさが・・・子どもっぽくてカワイイのだ。

「スープ、おいしいね」

僕はその言葉に、ほくそ笑んだ。
会話が増えるきっかけだ。

「ありがとうございます。デザートはトライフルですけど、お好きですか?」

トビアス様はナプキンで口を拭きつつ、視線を遠くにやり、記憶をたぐりよせている。

「トライフルか、懐かしいね。小さい頃、祖母がよく作ってくれたな」

僕は素早く空になった皿を片づけると、さりげなく質問をした。

「おばあ様って、どちらのご出身ですか?」

何気ない雑談で身辺調査、かつ家族関係、資産状況を探る。

「ベルウォールの北の方でね。寄宿学校の休みの時は、必ず行ったもんだよ。
絵の面白さも、祖母が教えてくれた」

腹が満たされると、副交感神経が優位になりリラックスする。

警戒心が緩むと、口も緩むものなのだ。
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