連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
「絵って、やはり東洋のですか?」

「うん、祖母の曾祖母が日本人でね。
曾祖父にあたる人が貿易商で、マカオから日本に渡ったらしい。

そこで、身の回りの世話役として、曾祖母が来たのだ。
彼女は武士の娘だけれど、身分を超えて、二人は一瞬で恋に落ちたらしい。

遠い異国に嫁いできた妻を慰めるために、たくさんの書画を買い込んだのだろう」

この人も異国、東洋の血が混じっているのか。

控えめな態度と、繊細でしなやかな空気感をまとっている。

トビアス様は遠い過去を懐かしむように、ワインを口に含みゆっくりと飲み干した。

「時代が時代だったから、周囲の反対や中傷もひどかっただろう。
曾祖父は、必死に妻を守ったと思うよ」

僕は彼の隣に座り、距離を詰めた。

「でも、彼女はなかなか気丈な人で、子どもを3人産んで立派に育て上げたし、日本の文化を世に広めて貢献したという話だ」

話を聞きながら、僕は彼の白い手に触れたい・・・微かな欲望。

「トビアス様は小さい頃から、たくさんの絵に囲まれて育ったのですね」

トビアス様は僕に、あの柔らかな視線を向けた。
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