連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス

トビアス様の健康管理

<トビアス様の健康管理>

「ずいぶんと買い込みましたね」

運転手がバックミラー越しに、後部座席の僕を見た。

赤いバックが目を引く。

「それは何ですか?」

「これはAEDです。トビアス様に何かあれば、すぐに対応できるように準備をしておきたいと思って。

あと、血圧計と、血中酸素濃度を測るのも買いました」

組織では、高齢の客も多かった。

高血圧や心疾患、痛風など持病を持つ客もいる。
そしてバイアグラを使う客も多い。

客の突然の心停止の場合は、心肺蘇生、AEDを使う。

絶対に、この場所で死なれては困るのだ。
不審死として、警察が必ず介入するからだ。

だから病院、クリニックまで、なんとか持つように、全力をつくす。

最前線に立つ僕たちも、救命措置の基礎知識を叩き込まれた。

マネージャーは医療知識を持つ、衛生兵の経験を持つ傭兵上がりも雇っていた。

「何かあっても、病院に運ぶには、それなりに時間もかかるでしょう」

「そうですね。トビアス様は心臓がお悪いと聞いていますから」
運転手は感心したように、僕を見た。

「そちらの段ボールも一杯ですねぇ」

両脇には段ボール箱、そこには野菜、肉、魚の包みで一杯だ。

「食事も不規則だし、偏っているので。僕が作ろうと思っています。
やっぱり新鮮なものは市場に行かないと・・・
今日はエビとムール貝のいいのがあったから、ブイヤベースにするつもりなんです」
< 42 / 70 >

この作品をシェア

pagetop