連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
僕はそう言いながら、段ボールの隣に置いてあるバスケットにそっと手を置いた。

「健康になるためには、食事、睡眠、適度な運動が大事でしょう?」

適度な運動・・・

自分で言って笑ってしまった。

僕はまるで、ジムのトレーナーのようではないか。

トビアス様に、「夜の適度な運動」を個人指導しなくてはならない。

僕は運転手の注意をそらすために、バスケットに自分のジャケットをかけた。

「お酒も適量なら、いいものですよね。食欲も出るから」

僕が言うと、運転手が何か思い出したように

「本館の地下には、大きなワインの貯蔵庫があります。
先代様が、有名なワインのコレクションをされていたと聞きました」

なるほど、よい情報だ。年代物の高級ワインは高値がつく。

そして、膨大な数の東洋絵画も相当に価値があるはずだ。

「今日、トビアス様は、夕食までにお戻りになりますよね」

ブイヤベースの仕込みには、時間がかかるのだ。

「はい、今日は大学の特別講義に行かれているので、これからお迎えにいきます」

運転手は別館の勝手口の近くまで、車をつけてくれた。

「お疲れ様です。荷物をおろしましょう」

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