連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
もし彼が犬嫌い、動物嫌いならこの作戦は失敗だ。

残念ながら、市場にいる本当の飼い主に戻さなくてはならない。

トビアス様はあごに指先をやり、小さな乱入者に戸惑っていた。

乱入者は尻尾をふりふりして、床をくるくる回っている。

「やばっ!!」

僕は、犬をつかんで外に飛び出た。

ポーチ脇の茂みに置くと、子犬は中腰になり、いきんで小指サイズのものをいくつかひねり出しはじめた。

「ギリギリ、セーフ!!」
僕はしゃがんで、小枝で土をかぶせた。

ふと見上げると、窓を開けてトビアス様がその様子を見ていて、苦笑していた。

「2階には上げないように。あと、その子の寝る場所は奥の使っていないクローゼットにするといい」

「あああ、ありがとうございます!!お前もお礼を言うんだよ」

僕は子犬を抱きしめたまま、90度にきっちりと腰を折った。

トビアス様は優しい・・・というより、泣き落としに弱い。


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