連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
マランは確実に、この館の空気を変えた。
「おいで!マラン!!」
変わったのは、僕のほうかもしれない。
子犬との生活は楽しい。
ちょっとしたおどけたしぐさが愛らしくて、そのたびに抱きしめてしまう。
トビアス様は・・・・
時折、2階の書斎から降りて来て、ソファーに座り新聞を読む。
マランは短い脚で、何とかソファーによじ登り、トビアス様の横にぴったりとくっつく。
彼はちょっと困るという表情をするが、そのまま姿勢を変えないでいる。
マランが眠ると・・・細い指先で、そっと小さな頭をなでるのを目撃した。
こいつはその辺のオンナより、落とすのがうまいじゃないか。
かわいいしぐさ、つぶらな瞳、ふわふわで温かい。
それらは庇護欲求をくすぐるのだ。
トビアス様のアンバーの柔らかな視線、マランにむけているのを見て、僕は少し嫉妬した。
トビアス様も、夕方はマランの散歩につきあうようになった。
規則正しい生活と、笑いと癒しのきっかけを子犬が作ってくれる。
この穏やかな生活を失いたくないが、ルーミンが戻ってくれば終わる。
その前に、何とかしなくてはならない。
トビアス様を落とす方法・・・僕は唇をかんだ。
すると、マランが「元気だせよ」というように、僕の顔をペロっとなめたので、思わず笑ってしまった。
声を立てて笑うなんて・・・
そんな記憶がないことに気が付くと、なぜか涙が頬を伝った。