連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス

リアンナとの出会い

<リアンナとの出会い>

修道院は山並みがよく見える小高い場所にあり、よく手入れがされた庭には、たくさんの花が咲き乱れていた。

「美しい場所だね」
「そうですね」

トビアス様が先を歩き、僕はその後をついていく。

手をつないで欲しい・・・

が、足元の石畳に揺れる木漏れ日を見て、思いとどまった。

彼と僕の関係は、奴隷とご主人様ではなくなったが、
これからは、会う事もかなわない立場になるかもしれない。

修道院の裏手、奥まったところに、小さな石の十字架がいくつも立っていた。

その中のひとつ、小さな真鍮製プレートに「リアンナ・ザカス」と書かれた十字架があった。

出生年月日不明。死んだ日付だけが刻まれている

死亡診断書では、推定22才で亡くなっている。
若すぎる死。

僕は、近くに咲いていたピンク色の小花をいくつか摘んで、十字架の前に置いた。

記憶にない人だけど、僕を産んでくれた人だから、天国で安らかに眠ってほしい・・・
そう祈った。

トビアス様が、僕の肩を軽く叩いた。

「さぁ、帰ろう」

小道を戻りかけた時、籐かごを持った年配の修道女とすれ違った時だった。

その人は、驚きと戸惑いの表情で振り返って、声を上げた。

「え、もしかして・・・あなた、リアム?」

「はい、そう呼ばれていますが?」

その修道女はいきなり僕の手を取り、感慨深げに僕の目を覗き込んだ。


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