連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
この建物はボスのものだ。

1階は画廊、2階はオークション会場、3階より上は宿泊施設。

そして、地下はバーになっているが、その奥に小さな舞台があり、客が男娼を選ぶショーパブになっている。

客も、関係者も1階入り口で、厳重なセキュリティーチェックを受ける。

出入り口はカメラで監視され、建物の外にプロレスラー上がりのガードが立つ。

地下には、窓とトイレがない。

「一階のトイレですね。見てきます」

僕はヒールの音を立てて、裏方の使う急な階段を登った。

1階の授業員用のトイレは、廊下の奥まったところにある。

カーテンの隙間から、数人のタキシード姿の男たちが、連れ立って地下に降り立って行くのが見えた。

客は40代、50代が多く、金持ちで妻子持ちだが、貪欲に刺激を求めるタイプだ。

ウェツ・・・グググ・・ゲェッ

異様な音に、僕はカーテンの隙間から顔を覗かせた。

薄暗い照明の中、窓を開けて、一人の男が身を乗り出して吐いている。

「大丈夫ですかっ?」

僕がかけよると、その男はハンカチで口を拭った。

「ああ、もう胃液しか出ない・・・」

男は窓枠に半身を持たれるように、僕を見上げた。

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