連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス

真実の愛

<真実の愛>

僕のそばで、トビアス様は少し口を開けて熟睡をしている。

いつまでも、この時間が続けばいいのに・・・

胸の傷跡にキス、唇にキス、額にキス。

僕の腕の中、眠っているトビアス様は、無防備で可愛い。

僕も、薔薇色の夢を一緒に見たい。

それから耳元でささやいた。

「一人前になったら、またここに戻ってきます。そして、あなたにプロポーズしますから」

彼の指先にキスをした。

「だから、待っていてくださいね」

僕は、静かにベッドからすべり降りた。


右手に紙袋、左手にマランの入っているバスケットを持って、台所の勝手口から庭に出た。

鳥のさえずりと、朝の光がまぶしい。

朝一番のバスに乗り、弁護士事務所に行って、仮の身分証明書をもらう段取りになっている。

ぎぃ・・ぎぃ・・・

自転車のこぐ音とともに、植え込みからルーミンが現れた。

「おや?おはようございます。リアムさん」

「おはようございます」

ルーミンは素早く僕の持っているバスケットと、紙袋に視線をやった。

「こんな朝早く、どちらに?」

「弁護士事務所に行きます」
僕は簡潔に答えた。

「それで、私がいない間、何か変わったことがありましたか?」

ルーミンは探るような目で、バスケットを見ている。

「いいえ、何もありません」

ルーミンは自転車のスタンドをおろすと、腕組みをした。

「そうですかぁ?あなたがトビアス様を誘惑したとか?」
< 65 / 70 >

この作品をシェア

pagetop