凍った花がとけるとき

後日談②いじわるな副社長

「はい、これお土産」

 そう言って海斗さんは大きな紙袋を差し出した。
 今日は海斗さんは郊外へ視察、私は内勤だったので、朝、会社で出かけるのを見送って以来だ。
 私は先に家に帰ってきて、夕飯の支度をしていたところだった。

「え、ありがとうございます」

 受け取って中を見ると、薄紙に包まれた……

「あ」

 気に入っているベルベット生地のクッションの、色違いだった。
 元々家にあるのはブルーだけれど、今回はボルドー。同じシリーズなのか、手触りが良い。

「見かけたから。限定カラーなんだって」
「そうなんですか? ありがとうございます。嬉しい」

 ふかふかのクッションに顔を埋める。

「良かった」と言って海斗さんは穏やかに笑っていたけれど。
 それがまさか、こんなふうに使おうとしてたなんて、聞いてなかった――。


 お風呂に入り、寝る準備を済ませ、寝室のベッドに腰掛けて本を読んでいた。
 枕元にはブルーとボルドー、二つのクッションを並べて置いたので、それに寄りかかるような形だ。

 私の後にお風呂を済ませた海斗さんが、隣に滑り込むようにしてやってくる。
 髪はちゃんと乾かしたみたいだけど、まだ熱を持った体が温かい。
 だいぶ冷えてきたので、くっつこうとすると、その前に顎を持ち上げられ、ちゅっと唇を合わせられた。
 持っていた本はあっという間に手から抜き取られ、素早く栞を挟んでサイドテーブルに遠ざけられる。

 あ、と思ったけれど、今日はするかなあと思っていたから、もう一度落ちてくる唇を黙って受け止めた。

 ちゅ、ちゅ、っとわざと音を立てるように口づけて、海斗さんは、のし掛かるように私の体を押さえつけた。

 両方の手、それぞれに指を一本一本丁寧に絡ませたかと思うと、わずかに開いた唇の隙間から舌が侵入してきた。
 上顎の裏を撫でるように舐められ、鼻に抜けるような甘ったるい息が、自分の口から漏れる。いつまで経っても、そんな自分の反応に慣れず、思わず体に力が入ってしまう。

 そんな私にもう慣れたのか、海斗さんの腕は気にも留めぬ様子で移動して、薄い部屋着の上から胸の膨らみに触れた。
 やわやわと、それも右側だけを揉まれて、思わず体を捩ってしまう。下着をつけていないので、そこはあっという間にぷっくりと立ち上がっていた。
 布に擦れてもどかしいけれど、それ以上に――。

「反対も……して、ほし……」

 荒い息を吐きながらそう言うと、海斗さんはその綺麗な顔をわずかに歪ませた。

「今日はゆっくりしようと思ったのに」

 と、ごまかすように笑って、胸ではなく脚に手をかけ、ぐいっと大きく割り開く。

「や……っ」

 ワンピースタイプの部屋着は、その動きで簡単に捲れてしまい、あっという間に海斗さんの眼前に下着姿を曝け出す。

「可愛いね」

 ボルドーの、レース生地のショーツ。真っ赤じゃないところが派手すぎずに気に入って買ったけれど、ごくりと海斗さんが喉を鳴らす様子に、その認識は間違いだったかもしれない、と思わされた。

 下着越しとはいえ、大切な部分を晒すような格好を取らされて、それだけでじわっと体の奥から蜜が染み出すのを感じる。
 咄嗟に起きあがろうとしたけれど、その動きは呆気なく封じられてしまった。

 足を閉じられないように自分の体を割り込ませた海斗さんは、すでに張りついているだろう下着を見て、「もう濡れてるけど?」と笑った。
 かっと顔が熱くなる。

 結婚してからの海斗さんは、すごく意地悪だ。――それも夜だけ。
< 60 / 62 >

この作品をシェア

pagetop