(マンガシナリオ) ハルと私のダ・カーポ
第2楽章 Largo - ラルゴ
○新田家・玄関・中
落ち込んでいる悠、引越し業者の人たちとぞろぞろと一緒に外から帰ってくる。
悠「すみません、お手間とらせてしまって」
業者1「いや、いいんですよ。次まで時間ありましたし。これだけ探しても見つからないなんて心配ですね」
悠「普段はこんな勝手な事する子じゃないんですけど」
悠、一人一人にお礼を言いながらお茶と軽食を渡す。
晴琉、キャプテンと一緒に帰ってくる。
晴琉「悠にい、引越し終わった?」
悠「晴琉! キャプ!」
悠、キャプテンめがけて飛びつく。
キャプテン、嫌そうにするが諦めて悠に抱きつかれる。
業者1「(笑顔で)よかったですね。じゃ、これで」
悠「本当に、本当に、ありがとうございました」
悠、キャプテンを抱っこしながら何度も引越し業者の人たちに礼をする。
引越し業者の人たち、喜んで帰っていく。
悠人「みんなと一生懸命さがしたんだよ、キャプ。迎えに行ってたの? ケガなくてよかった」
悠、キャプテンにキスをする。
キャプテン、嫌そうにしながらも我慢している。
晴琉「で、今度は何企んでんの?」
悠「企んでなんかないよ。大好きな弟とキャプと新居で穏やかに過ごしたいだけ」
晴琉「世界中で大人気の指揮者が、急に帰ってくるとか、絶対変だろ?」
悠「ずっと離れ離れだったから寂しくてね。キャプも、晴琉にものすごく会いたがってたし。で、どうするの? 晴琉好みのピアノ、ドイツから持ってきたんだけど?」
晴琉、しばらく考え込む。
晴琉(ここにいれば、桜空に会えるかも…)
晴琉「…ったく。しょうがねぇなぁ。こっちで一緒に住んでやるよ」
悠「本当? キャプ、聞いた? 晴琉が同棲してくれるって!」
晴琉「(怒って)なあ、殴っていいか?」
悠「(満面の笑みで)晴琉になら、いくらでも」
晴琉、呆れて天を仰ぐ。
晴琉「いいか? 俺に絶対干渉すんなよ。来い、キャプテン!」
キャプテン、悠の腕をすり抜けて晴琉に甘える。
晴琉、キャプテンを可愛がる。
晴琉「キャプテンはずっと俺の側にいていいぞ」
悠「(膨れっ面で)ずるいよ。(にやついて)フフフ。でも不思議。100パーセント断られると思ったのに」
晴琉「お前がいるからだよー、キャプテン」
悠「どうかな。もしかして、まだあの子探してるの?」
晴琉「探してねえって!」
× × ×
駅。
桜空、キャプテンの頭をなでなでしている。
× × ×
晴琉、キャプテンを無茶苦茶になでる。
キャプテン、うれしがって仰向けになる。
悠「ほんと、素直じゃないんだから。意地っ張りというかなんと言うか…」
晴琉「喋れねぇようにその口、縫うぞ」
悠「(目をキラキラさせ)本望です」
晴琉「なあ、ブラコン超えちまってないか?」
悠「ただの愛だよ。離れてた時間が育んだ愛」
悠、酔いに浸る。
晴琉、大きなため息をつく。
○学校・教室・中・朝
桜空、カバンから教材を取り出し、机の上で整頓している。
由季、バタバタと猛ダッシュで駆け込んでくるやいなや桜空の机の上になだれこむ。
由季「(真剣な顔)桜空。ヤバいの見た!」
桜空「由季ちゃん、顔、怖い」
由季、息を荒げながら桜空の手を握る。
由季「イケメンの実物って超が何個あっても足りない。桜空だって、見たらこうなるって!」
桜空「そう? 誰? 3年の先輩?」
由季「転校生! あのバズりにバズりまくってるピアニスト!」
桜空「ハル?」
由季「そうそうそう!実在してたんだね。立ってるだけで神オーラすごいから」
桜空の顔が曇る。
由季、不思議そうに桜空をのぞきこむ。
由季「あれ? 興味なし?」
桜空「まあ…ね」
由季「同クラにならないかな? 仲良くなりたいっ!」
桜空「別のクラス希望」
由季「なんで?!」
桜空「なんとなく」
由季「(怒って)もう! でもだいたい桜空が嫌だって言うと、その反対になるよね(にやり)同クラ確定!」
桜空「(お祈りポーズで)同じクラスになりますよーに!」
桜空、ニコニコして由季を見る。
由季「そのお願い、今回だけ効き目ありそう」
由季、ニヤニヤして桜空を見返す。
短髪黒髪で日焼けしているガタイのデカい吾妻先生(28歳)、丸めた教科書で肩をたたきながら、だるそうに入室する。
吾妻先生「ホームルーム始めるぞーっていっても来週からテストだから、今日から部活動停止な。残念。以上」
由季、手を挙げる。
吾妻先生「どうした、梶田由季」
由季「アズミン。転校生、どこのクラス?」
吾妻先生「おい、『吾妻先生、転校生はどこのクラスですか?』だろ。忘れてた、紹介すんの」
吾妻先生、廊下を見に行く。
吾妻先生「あれ? あいつ、どこ行った?」
遠くからピアノの音が聞こえてくる。
桜空(この音……晴琉だ……)
桜空、思わず胸元をギュッとつかんで苦しそうにしている。
吾妻先生「ったく、勝手に音楽室使うなってクギさしたのに」
吾妻先生、教室を飛び出し、転校生の耳を引っ張って戻ってくる。
背が高く、薄い茶色のサラサラの髪がフワワと揺れている。
イタズラが大好きそうなチャーミングな目に痛みで少し涙が滲む転校生。
吾妻先生「ちょっと目を離すとこうだ」
晴琉「いてぇって!マーくん」
吾妻先生「今、なんて言った?」
晴琉「わりぃわりぃ」
吾妻先生「それが謝る態度か?」
晴琉「勝手にピアノを弾いてすみませんでした」
吾妻先生「しゃんとしろ。ほら、転校生、自己紹介」
晴琉「新田晴琉です。よろしく! ピアノやってます」
由季「ハル! 知ってます! 動画見てます!」
生徒1「ファンです!」
生徒2「私も!」
次々と自分をアピールする生徒たち。
晴琉、とっておきの営業スマイルをみんなに返す。
晴琉「マジで? 嬉しい!」
吾妻先生「あー、先に言っておく。コレ、俺のいとこ」
クラス全員、嘘!と声をあげる。
由季「早く言ってよ!」
吾妻先生「聞かれてないからな」
桜空、下を向いている。
晴琉、桜空に気付き目を丸くする。
桜空の側に颯爽と歩いていく。
晴琉「桜空!」
桜空、下を向いたまま。
晴琉「宮本桜空だろ? 小さい時同じピアノ教室だった」
桜空、クラス中から視線を浴びる。
桜空「……人違いです」
晴琉、桜空の顎に手をかけて上をむかせる。
桜空、晴琉と一瞬目が合い鼓動が激しくなる。
教室に女子たちのキャーッという悲鳴が響く。
晴琉「嘘はよくないぞ。(みんなに向かって)俺たち、幼馴染なんだ〜」
桜空、晴琉の手を振り払う。
晴琉「なに照れちゃってんの? 昨日は優しくしてくれたのに」
桜空「昨日?」
晴琉「たくさんなでなでしてくれたじゃん!」
教室中が悲鳴とざわつきで不穏な空気になる。
真っ赤になった桜空、みんなの敵意の視線にいてもたってもいられなくなり、席を立つと出て行く。
吾妻先生「おい、宮本!」
由季「桜空!」
吾妻先生、由季を制し、桜空を追いかける途中で晴琉の頭を叩く。
痛そうにする晴琉の横を素早くすり抜けて桜空を追う吾妻先生。
○同・教室外廊下・朝
桜空、教室から出て走る。
吾妻先生、桜空に追いつく。
吾妻先生「待ってくれ、宮本。悪かった。アイツの代わりに謝る。申し訳ない」
桜空、立ち止まるが振り返らない。
桜空「先生、私のクラス、変えてください」
落ち込んでいる悠、引越し業者の人たちとぞろぞろと一緒に外から帰ってくる。
悠「すみません、お手間とらせてしまって」
業者1「いや、いいんですよ。次まで時間ありましたし。これだけ探しても見つからないなんて心配ですね」
悠「普段はこんな勝手な事する子じゃないんですけど」
悠、一人一人にお礼を言いながらお茶と軽食を渡す。
晴琉、キャプテンと一緒に帰ってくる。
晴琉「悠にい、引越し終わった?」
悠「晴琉! キャプ!」
悠、キャプテンめがけて飛びつく。
キャプテン、嫌そうにするが諦めて悠に抱きつかれる。
業者1「(笑顔で)よかったですね。じゃ、これで」
悠「本当に、本当に、ありがとうございました」
悠、キャプテンを抱っこしながら何度も引越し業者の人たちに礼をする。
引越し業者の人たち、喜んで帰っていく。
悠人「みんなと一生懸命さがしたんだよ、キャプ。迎えに行ってたの? ケガなくてよかった」
悠、キャプテンにキスをする。
キャプテン、嫌そうにしながらも我慢している。
晴琉「で、今度は何企んでんの?」
悠「企んでなんかないよ。大好きな弟とキャプと新居で穏やかに過ごしたいだけ」
晴琉「世界中で大人気の指揮者が、急に帰ってくるとか、絶対変だろ?」
悠「ずっと離れ離れだったから寂しくてね。キャプも、晴琉にものすごく会いたがってたし。で、どうするの? 晴琉好みのピアノ、ドイツから持ってきたんだけど?」
晴琉、しばらく考え込む。
晴琉(ここにいれば、桜空に会えるかも…)
晴琉「…ったく。しょうがねぇなぁ。こっちで一緒に住んでやるよ」
悠「本当? キャプ、聞いた? 晴琉が同棲してくれるって!」
晴琉「(怒って)なあ、殴っていいか?」
悠「(満面の笑みで)晴琉になら、いくらでも」
晴琉、呆れて天を仰ぐ。
晴琉「いいか? 俺に絶対干渉すんなよ。来い、キャプテン!」
キャプテン、悠の腕をすり抜けて晴琉に甘える。
晴琉、キャプテンを可愛がる。
晴琉「キャプテンはずっと俺の側にいていいぞ」
悠「(膨れっ面で)ずるいよ。(にやついて)フフフ。でも不思議。100パーセント断られると思ったのに」
晴琉「お前がいるからだよー、キャプテン」
悠「どうかな。もしかして、まだあの子探してるの?」
晴琉「探してねえって!」
× × ×
駅。
桜空、キャプテンの頭をなでなでしている。
× × ×
晴琉、キャプテンを無茶苦茶になでる。
キャプテン、うれしがって仰向けになる。
悠「ほんと、素直じゃないんだから。意地っ張りというかなんと言うか…」
晴琉「喋れねぇようにその口、縫うぞ」
悠「(目をキラキラさせ)本望です」
晴琉「なあ、ブラコン超えちまってないか?」
悠「ただの愛だよ。離れてた時間が育んだ愛」
悠、酔いに浸る。
晴琉、大きなため息をつく。
○学校・教室・中・朝
桜空、カバンから教材を取り出し、机の上で整頓している。
由季、バタバタと猛ダッシュで駆け込んでくるやいなや桜空の机の上になだれこむ。
由季「(真剣な顔)桜空。ヤバいの見た!」
桜空「由季ちゃん、顔、怖い」
由季、息を荒げながら桜空の手を握る。
由季「イケメンの実物って超が何個あっても足りない。桜空だって、見たらこうなるって!」
桜空「そう? 誰? 3年の先輩?」
由季「転校生! あのバズりにバズりまくってるピアニスト!」
桜空「ハル?」
由季「そうそうそう!実在してたんだね。立ってるだけで神オーラすごいから」
桜空の顔が曇る。
由季、不思議そうに桜空をのぞきこむ。
由季「あれ? 興味なし?」
桜空「まあ…ね」
由季「同クラにならないかな? 仲良くなりたいっ!」
桜空「別のクラス希望」
由季「なんで?!」
桜空「なんとなく」
由季「(怒って)もう! でもだいたい桜空が嫌だって言うと、その反対になるよね(にやり)同クラ確定!」
桜空「(お祈りポーズで)同じクラスになりますよーに!」
桜空、ニコニコして由季を見る。
由季「そのお願い、今回だけ効き目ありそう」
由季、ニヤニヤして桜空を見返す。
短髪黒髪で日焼けしているガタイのデカい吾妻先生(28歳)、丸めた教科書で肩をたたきながら、だるそうに入室する。
吾妻先生「ホームルーム始めるぞーっていっても来週からテストだから、今日から部活動停止な。残念。以上」
由季、手を挙げる。
吾妻先生「どうした、梶田由季」
由季「アズミン。転校生、どこのクラス?」
吾妻先生「おい、『吾妻先生、転校生はどこのクラスですか?』だろ。忘れてた、紹介すんの」
吾妻先生、廊下を見に行く。
吾妻先生「あれ? あいつ、どこ行った?」
遠くからピアノの音が聞こえてくる。
桜空(この音……晴琉だ……)
桜空、思わず胸元をギュッとつかんで苦しそうにしている。
吾妻先生「ったく、勝手に音楽室使うなってクギさしたのに」
吾妻先生、教室を飛び出し、転校生の耳を引っ張って戻ってくる。
背が高く、薄い茶色のサラサラの髪がフワワと揺れている。
イタズラが大好きそうなチャーミングな目に痛みで少し涙が滲む転校生。
吾妻先生「ちょっと目を離すとこうだ」
晴琉「いてぇって!マーくん」
吾妻先生「今、なんて言った?」
晴琉「わりぃわりぃ」
吾妻先生「それが謝る態度か?」
晴琉「勝手にピアノを弾いてすみませんでした」
吾妻先生「しゃんとしろ。ほら、転校生、自己紹介」
晴琉「新田晴琉です。よろしく! ピアノやってます」
由季「ハル! 知ってます! 動画見てます!」
生徒1「ファンです!」
生徒2「私も!」
次々と自分をアピールする生徒たち。
晴琉、とっておきの営業スマイルをみんなに返す。
晴琉「マジで? 嬉しい!」
吾妻先生「あー、先に言っておく。コレ、俺のいとこ」
クラス全員、嘘!と声をあげる。
由季「早く言ってよ!」
吾妻先生「聞かれてないからな」
桜空、下を向いている。
晴琉、桜空に気付き目を丸くする。
桜空の側に颯爽と歩いていく。
晴琉「桜空!」
桜空、下を向いたまま。
晴琉「宮本桜空だろ? 小さい時同じピアノ教室だった」
桜空、クラス中から視線を浴びる。
桜空「……人違いです」
晴琉、桜空の顎に手をかけて上をむかせる。
桜空、晴琉と一瞬目が合い鼓動が激しくなる。
教室に女子たちのキャーッという悲鳴が響く。
晴琉「嘘はよくないぞ。(みんなに向かって)俺たち、幼馴染なんだ〜」
桜空、晴琉の手を振り払う。
晴琉「なに照れちゃってんの? 昨日は優しくしてくれたのに」
桜空「昨日?」
晴琉「たくさんなでなでしてくれたじゃん!」
教室中が悲鳴とざわつきで不穏な空気になる。
真っ赤になった桜空、みんなの敵意の視線にいてもたってもいられなくなり、席を立つと出て行く。
吾妻先生「おい、宮本!」
由季「桜空!」
吾妻先生、由季を制し、桜空を追いかける途中で晴琉の頭を叩く。
痛そうにする晴琉の横を素早くすり抜けて桜空を追う吾妻先生。
○同・教室外廊下・朝
桜空、教室から出て走る。
吾妻先生、桜空に追いつく。
吾妻先生「待ってくれ、宮本。悪かった。アイツの代わりに謝る。申し訳ない」
桜空、立ち止まるが振り返らない。
桜空「先生、私のクラス、変えてください」