あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜



——まずい、呑まれる。

そう思った時、助け舟が出された。


『白雪ちゃん、入るよ』


控室のドアを叩く音と声がして、咄嗟に後ろへ飛び退く。そして間も無くドアの向こうから声の主らしき人物が姿を現した。


「準備中にごめん。ちょっと機材に不具合があって撮影開始が遅れそうなんだ。また呼びにくるから、ここでこのまま支度を進めて待っててくれる?」

「わ、わかりました!」


必要事項を言うだけで言ってそのスタッフは部屋を出ていく。来てくれて良かった。いや本当に。

絶妙なタイミングでの他人の登場にようやく落ち着きを取り戻し、小さくため息を吐けば霜月さんがクスクスと笑った。


「邪魔が入っちゃったね」

「…元々断るつもりでしたし」

「それは残念」


先程の物はイメージと違ったのか、霜月さんは他のピアスを手に取る。
つかみどころのない人だ。残念と言う割には、表情はまるでそうは見えない。


「俺から誘って断られたの、初めてだよ」


そして幾つか耳に当てながら、うんこれだ、なんてのんびりと言う。


< 12 / 331 >

この作品をシェア

pagetop