あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
——まずい、呑まれる。
そう思った時、助け舟が出された。
『白雪ちゃん、入るよ』
控室のドアを叩く音と声がして、咄嗟に後ろへ飛び退く。そして間も無くドアの向こうから声の主らしき人物が姿を現した。
「準備中にごめん。ちょっと機材に不具合があって撮影開始が遅れそうなんだ。また呼びにくるから、ここでこのまま支度を進めて待っててくれる?」
「わ、わかりました!」
必要事項を言うだけで言ってそのスタッフは部屋を出ていく。来てくれて良かった。いや本当に。
絶妙なタイミングでの他人の登場にようやく落ち着きを取り戻し、小さくため息を吐けば霜月さんがクスクスと笑った。
「邪魔が入っちゃったね」
「…元々断るつもりでしたし」
「それは残念」
先程の物はイメージと違ったのか、霜月さんは他のピアスを手に取る。
つかみどころのない人だ。残念と言う割には、表情はまるでそうは見えない。
「俺から誘って断られたの、初めてだよ」
そして幾つか耳に当てながら、うんこれだ、なんてのんびりと言う。