あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「漣は…フランスにいたの?」
「まあね」
言葉短く言い、漣は片膝を立てる。
「事務所辞めて、自分探しみたいなことしてたらなんか居付いちゃって。ビザも切れるしぼちぼち帰国しようかと思ってたら仕事が舞い込んできたからまあいっかって」
「…そう」
かつては気が向かないと受けないと言っていたのに、フリーになったから心持ちが変わったのだろうか。そう思うと少し胸が痛んだけれど、気付かないふりをした。
「白雪は仕事どう?」
その言葉にどきりとした。
自分を捨ててまで選んだ仕事だ。気になるのは当たり前だ。
「…順調だよ。朝ドラのヒロインもさせてもらったし、今度は大河ドラマに出るの」
「へえ、凄いじゃん」
「……」
何を話していいか分からない。だって気まず過ぎる。
漣は嫌じゃないんだろうか、あんな別れ方をしたのに。それとも、そんなことどうでもよくなるくらい私への気持ちが無くなった?
——ああ、なんで。
なんで私は、泣きそうになったんだろう。
私にはそんな資格は無い。仮に漣が知らない誰かと恋人になっていたって、結婚していたって私に嫉妬する権利は無い。