あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
込み上げてくる感情が抑えられなくなって、私は立ち上がった。
「ごめん、私、部屋に戻る…」
そう言って肩からバスタオルを取り漣へ渡そうとした。けれど腕を掴まれ、タオルははらはらとプールの中に落ちてしまった。
「まだ来たばっかりじゃん。もう少しいなよ」
「でも…」
「それとも予定あった?」
漣の見透かすような瞳に息を呑む。
「夕方から…エステの予約、入れてる」
「そ。まだ昼過ぎなんだし、時間はあるよね」
「……」
優しく掴まれた腕はいつでも振り払える。
けれど私はそれをしなかった。
ここが外国で、私達を知る人が誰もいないというのが後押しになったのかもしれない。
私は抵抗することなく再び座り、膝に手を当て俯いた。
「けど、そっか。成る程ね」
視線を水面に落とす私の隣で、漣は勝手に何かに納得したように言った。
「…なにが?」
「いや、売れっ子になったからこのホテルに泊まれるようになったんだって思ってね。他の人と会いたくなくてここ選んだんだけど、まさか白雪と会うとはなあ」
「…ごめん」
「なんで謝るの?」
クスクスと笑いながら尋ねる漣に口を結んだ。
「…私となんか、会いたくなかったよね」
弱々しくそう吐けば、一瞬だけ沈黙が流れた。