あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
壊れたひと



戻ってきた漣はイエスともノーとも言わなかった。ただ私の家の場所だけ確認し、エステの時間に間に合うように部屋の外に出された。

あれから数日、何事もなく撮影は順調に進んでいる。そして気付けばそれも最終日を迎えていた。

漣は相変わらず誰に対しても人の良い笑顔を浮かべていて、今も女性スタッフと朗らかに話しハートを飛ばされている。


「……」


それを見て何か感じるかと言われれば微妙だ。10代や20代前半の若い頃ならいざ知らず、この歳になってこの業界で揉まれ続けていれば嫉妬なんてものは上手く扱えるようになってくるものだ。


漣はどうするつもりなんだろうか。咄嗟に放ってしまったことだから断られるのは構わない。自惚れが過ぎたとも思っている。

そもそもの話、先日のあれは何だったんだろう。

過去の女を引きずるような男に見えるのかと宣っておきながら組み敷くところから、あの頃のようにセフレとしての関係を望んでいるのかと思えば、結局は何もせずに部屋を追い出すし。

以前にも増して、漣が分からない。

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