あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
すれ違うスタッフさん達に挨拶をしながらスタジオを後にし、日が傾きかけた道のりを歩いて駅に着く。
改札を抜けるためスマホを取り出したところで、それに引っかかっていた何かがバッグから落ちてしまった。
「?なにこれ」
全く見覚えのないそれを拾い上げれば、名刺だった。それに書かれた名前にギョッとする。
——霜月さん…!?
事務所の名前とその下に「霜月漣」の文字。
そして印字された電話番号の他に走り書きをしたような数字の羅列があった。
考えるまでもなく、これは携帯の番号。そしておそらくプライベートのもの。
それを理解した瞬間、ドッと胸が跳ねた。
いつの間に入れたのか、一瞬過ったけれどそこは重要じゃない。霜月さんは「もしも」の時の為に先手を打ったのだ。
恐ろしい人だ、本当に。
使う事なんてないだろうと思ってそのまま捨てようとしたけれど、ゴミ箱の前まで来て土壇場で躊躇ってしまった。
——まあ、持っておくだけなら別に…
人脈はあるに越した事無いし。そう自分に言い訳を並べ立て、それをもう一度バッグの中へと仕舞い込んだ。