あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「俺が脚本家なら白雪がこの男と絡むシーンは全部書き直すね」
「馬鹿じゃないの。恋人なんだし、そもそもがそういう役だから」
「一番許せないのはそれだよ。恋人ってなに。しかも芸妓って、俺の白雪が他の男に媚び売って肌晒しながら擦り寄るとかあり得ないから」
「何想像してるの…大河にそんな過激な描写あるわけないじゃない」
いい加減冷たいからと押しのければ仕方ないなと何故かこちらが譲歩されながら離れていった。間も無くして戻ってきた漣はドライヤー片手に隣に座り込む。
「明日朝イチで事務所でしょ。寝なくていいの?」
「ん…もう少し。先に寝てていいよ」
時間があるうちに台本を頭に叩き込んでおきたい私は言葉半分に聞き流し静かに没頭する。
私は俗にいう憑依型とは違い、役作りは境遇や状況を客観視して論理的に構築していくタイプでその分自分の中に落とし込むのに時間がかかる。特にこういった創作物でなく史実を元にした話であれば、歴史的背景も知りたくなってしまう。
そうしてスマホ片手にのめり込んでいると、不意に膝にかけられた柔らかな肌触りに顔を上げた。
見ればいつのまにか髪を乾かし終わっていた漣が大きめの毛布を持ってきていて、並んで座る私達の膝にかけていた。
「漣?」
声をかければ笑顔が返され、私の肩に寄りかかり重みがかけられる。
「邪魔はしないから、こうしてていい?」
「……」
既に漣は目を閉じている。邪魔をされないならば拒否する理由は無い。そう思って視線を戻すと間も無くして寝息が聞こえてきた。