あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
彼の言葉に笑顔を返すしかなかった。きっと彼には理解できないだろう。那由多だけじゃ無い、他の誰にも。
それだけ漣の存在は私の奥深くまで打ち付けられたし、忘れるにはあまりに鮮烈すぎた。心奪われるとはこういうことなのだと、痛いほどに痛感している。
私の表情で全てを悟った那由多は多くは語らず、心底呆れた目を向けてため息を吐いた。
「次は慰めねえぞ」
そう一言だけ言い、残りのビールを飲み干した。
「…分かってる。ありがとう、那由多」
そう言った時、ガラリと勢いよく個室のドアが開いた。
「はー!やっと着いたぁ。2人ともやってる〜?」
相変わらず弾ける笑顔で現れた萌葉は、既に出来上がってるのではと疑うようなテンションで入ってきた。
「お疲れ萌葉」
「相も変わらず落ち着きがねえなお前は」
三十路に入ったんだからいい加減落ち着けと出会い頭から喧嘩をふっかける那由多に思わず笑いが溢れる。「那由多うるさい」と毒づきながら自然と私の隣に腰を下ろし、とりあえず生でと豪快にタッチパネルを押すと再び私達の方へと向き直った。
「それでなんの話してたの?私が話遮っちゃったかな?」
30代になっても童顔で肌艶の良い顔を寄せながらうきうきと言われ、私がそれに答えようとすれば先に那由多が割って入った。