あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「白雪さん、到着されました!」
スタジオ内に声がかけられる。
今日の撮影は雑誌のグラビア撮影で、今の仕事はほとんどそれが占めている。
軽い挨拶のあと、準備のためメイクルームに通された。メイクを施される最中に今日のテーマだったりイメージの説明を受け、ヘアセットまで終えたところで立ち上がる。
「じゃあ白雪ちゃん、控室でスタイリストが待ってるから着替えてきてくれる?」
「分かりました」
スタッフさんに促されメイクルームを出て控室だという場所に入れば、大量の衣装や小物が並べられたすっかり見慣れた光景があった。
ただひとつを除いては。
「いらっしゃい」
入室した私を見て微笑みを浮かべる美麗な男性に硬直した。
あれ、今日って男性モデルとの絡みあったっけ。いやそんなわけあるかい。
そう一瞬呆けて首からかけられたネックストラップに「staff」と書かれているのを見て、余計に混乱した。
「初めまして、及川白雪ちゃん」
甘いマスクと表現するにふさわしい端正な顔立ちに加え、目元の泣きぼくろが色気の暴力を放っており、更に声までとびきり甘い。
低すぎないテノールボイスが鼓膜を撫でるように刺激した。